Motion-driven enhancement of a lower region cue in depth perception
論文概要
下側領域手掛かり(lower region cue)が図地手掛かり(figure-ground cue)の一つであり,潜在的な奥行き手掛かり(depth cues)であることは,従来から知られていた.本成果は,水平に運動する映像が,画像下側の領域の奥行き感を強調することを新たに発見し,確認した.同時に,下側奥行き手がかりが,遮蔽や運動の連続性などその他の要因と競合・強調する場合に,奥行き感がどのような影響を受けるかを調査した.
特筆すべき研究成果
水平運動を持つ上下の領域からなる場合,ほぼ常に下側領域が手前に見えることが観察され,図地手がかりにおける下側領域手がかりの性質と類似した結果を得た.特に,タブレットデバイスに映像を出力し,上から覗き込むようにして観察した場合,自身の身体に近い側が手前に浮き出るように観察された.この結果は,人の奥行き感と身体性の関わりを調査可能な新たな刺激映像を提案できた点で,特筆すべき成果であると考える.
今後の展望・応用+社会実装の可能性
本研究成果により提案された映像は,今後奥行き近くの心理物理学的調査における刺激映像としての利用が広く期待される.特に,身体や網膜像の上下,姿勢の変更による刺激映像の観察結果の変化を調査することで,身体性と奥行き感に関わる新たな知見が得られる可能性がある.同時に,階段や路面などに本提案映像を投影することで,運動定義領域を利用した奥行き感の強調などへの応用も期待できる.
Yuki Kubota, Ryota Mima, Takahiro Kawabe, Taiki Fukiage, Masahiko Inami
Journal of Illusion 3, 2022.