見えない長い腕

論⽂概要

本研究は,普遍的な⼈体⽐率から乖離した⾝体,特に⽚⽅の腕が通常よりも⻑い⾝体について,能動的透明⾝体法を⽤いて腕が⾒えない場合にも⼈がそれを⾃分の⾝体と感じることができるか調べた。その結果,⼿⾜の同期運動によって⾝体所有感が⽣じ,⼿先の位置によって腕が⻑くなったように感じられた。また,腕の⻑い⾝体を獲得したことでリーチング⾏動にも変化が⾒られた。

特筆すべき研究成果

⼿⾜のみを⾝体運動と同期して提⽰する能動的透明⾝体法を⽤いて,⼿の位置のみを変えることで,⾒えない⻑い腕に対して,通常の⻑さの腕と同程度の所有感が誘発された。つまり,⼿⾜のみを⾝体運動と同期して提⽰することで,⾒えない腕が⻑く感じ,そこに所有感を感じることが主観評定により⽰された。また,腕の⻑い⾝体を⽤いた10 分間のリーチング⾏動の間に⾏動変容が⽣じ,⻑い⽅の腕がより多く使われるようになった。

今後の展望・応⽤+社会実装の可能性

リーチング⾏動の変化が,⻑い腕が⾝体化したからなのか,単に道具としてその利⽤に習熟したからなのかは本研究では明らかとなっていない。今後は,腕の⻑さや位置の知覚表象の変化,⾝体周囲の空間表象の変化,あるいは脅威刺激に対する⽪膚コンダクタンス反応などを⽤いて,⾝体化と道具化の違いを明らかにする。

主要成果論⽂

近藤 亮太, 上⽥ 祥代, 杉本 ⿇樹, 南澤 孝太, 稲⾒ 昌彦, 北崎 充晃 ⽇本バーチャルリアリティ学会論⽂誌 24, 351-360, 2019 DOI: https://doi.org/10.18974/tvrsj.24.4_351.